観劇感想『こじらせクインテット』 2018.10.28(sun)

 

 お世辞にもあまり広いとは言えない畳の部屋で、歌手、主夫、雑誌の編集長、居酒屋の店主の4人が、再就職活動中の男性(以下:田中)を時には弄り、時には鼓舞し、時には真剣にぶつかる。

はたから見たらバカなやり取りのようなのに、本人達は大真面目にやるそのギャップが面白い。

 

 5人が田中の部屋で騒ぐ一方、同時進行で雑誌の編集長(以下:佐藤)の職場での日常やトラブル、ときめきが垣間見える。

 お局、ドジっ子、一癖も二癖もある女流作家や料理研究家、同社で別雑誌を担当しているドS編集長と腰巾着。それから、前作に登場していたとあるキャラクターが今回の物語でリンクしているなど、前作を観た観客はクスっとなる要素が詰まっていた。

 

 田中の再就職活動の経過を他の4人が見守り、再就職が叶ったときが物語の終着点かと想像していたが、実はそうではなかった。田中の部屋でのやり取りと佐藤の物語を同時進行していた理由が終盤にわかる。まさか、あの登場人物たちが実はああだったなんて…と、盤面がひっくり返るような終わり方。

 恐らく違うとは思うが、この物語自体が実は、最後に佐藤が受け取った小説の一部なのではないか?なんて妄想が頭をよぎる。

 

 劇中に入る小ネタは年齢の差で分かるものと分からないものがあり、分かるものに関してはただただ素直にクオリティが高いなと感心しながら笑った。ただ一番ツボだったのは、あの定義になったあとで佐藤が橘に対して発した「俺の方が上手くやれるのに!!」という台詞。あの流れで言われると頷くしかなかった。

 

 前回と今回の作品しかcoup companyさんの作品は観たことが無いとはいえ、あいかわらず登場人物が多く一人一人の個性が濃い。けれど、誰かが浮くわけでも霞む訳でもないバランスが心地よく、前作より好きな物語だった。