観劇感想『ホーム49症候群』 2018.10.7(sun)

 

 あらすじ「泥棒が忍び込んだ家は49日の法要の準備最中。家の中にはなんと、おばあさんの幽霊が!突然のチャイム。怒鳴り込んで来たのはこの家の夫の浮気相手!?さらには外出中だった妻と夫まで帰ってきてしまい大騒動に!!笑いあり涙ありの、家族の物語。」(パンフレット記載抜粋)

 

 今回の松山大学演劇部の公演は、昼と夜の公演ごとに一部のキャストが入れ替わるWキャストだった。

 お婆さんの秀子という役のベースはしっかりしている為か、穏やかで可愛らしい役柄だなと演者が変わっても感じ、秀子の娘の明美は、演じる役者によって台詞一つ一つの意味合いや重さが違っているように個人的には感じた。

 終盤、夫が帰ってきてからお互いが誤解していながら進んでいくコントのようなやり取りのシーンが好きだった。

 

 「家族」といえど、もしくは「家族」だからか、望むものや期待するものは大きくなる時もあるし、言葉が少なくても分かり合えると過信して分かり合えないことは沢山あると思う。それは、様々な物語の題材になるほど。

 ゆりと明美に関しても、幼い頃に経験してきたことがほぼ真逆が故に衝突する。親に愛されてはいたが心地よい愛だとは感じず受け付けなかった者と、親にもっと興味を示して欲しく尚愛されたかった者。その二人の境遇を聞いたうえで、「どちらが幸せでどちらがましか、なんてのは誰にも決められない」と和也が言う。本当にその通りだなと思う。

 

 それでも、最後に名前を呼んでもらうことなく、それぞれ思っていることを伝えられず、すれ違ったまま一生逢えなくなるほど寂しいものはない。名前を呼んで貰えなかった者も、名前を呼べなかった者もずっと後悔してしまう。だからこそ、秀子の思い入れのある座椅子に座ることによって再び会って話すことができ、最後、明美も秀子も救済されて良かった。

 この物語に登場する人物たちは心根が優しく、とても柔らかい世界だと、和やかに感じて観終わることができる作品でした。