観劇感想『よろこびのうた』 2018.12.15(sat)

 

 あらすじ『この物語は、徳島県において、日本で初めてベートーヴェンの第九『歓喜の歌』が歌われた史実を元に、ドイツ人俘虜と日本人との交流、葛藤、対立、和解を描いた、現在に通じる愛と平和のエンターテイメントです。第一次世界大戦中の徳島、『坂東俘虜収容所』には、1000人近いドイツ兵俘虜が収容されていました。ドイツ軍楽隊の若い兵隊『ミハエル』は、老舗旅館の箱入り娘『明子』に一目惚れ。明子もまた西洋音楽を教わるうちに次第にミハエルに惹かれていきます。ところが明子の父、元軍人の『豪太郎』は二人の交際に大反対、明子の見合い話を強引に進め、二人の仲を裂こうとします。やがて戦争は終わり、ミハエル達は祖国ドイツに帰ることになりました。ドイツ人たちは町の人々に感謝の思いを伝える為、最後の音楽会を開いて『歓喜の歌』を歌うことにします。その時、ミハエルと明子は…?』(パンフレット記載抜粋。)

 

 ヒロインである明子の、澄んだ歌声に鳥肌がたった。演技も、チャーミングでありながら芯のある女性で目を惹かれるのだが、歌う場面では更に目が離せなかった。

 ミハエルvs豪太郎や、パウル大尉vs松江所長たちのような、熱い対立から最後は和解し、気持ち良く終わるという物語も久しぶりに観た為か、新鮮な気持ちになった。

 

 恐らく明子は元々、広い世界を見たいといった願望が強い女性なのだろうが、一人娘という目に見えない両親の圧が、性根の優しかった彼女の「本当にしたかったこと」を色々と制限してしまったのだと思う。だが、自分の気持ちに素直に行動するミハエルに影響され、明子も少しずつ正直な思いを両親に伝え訴え続ける。最後あの終わり方になったのは、今の時代を意識して作られたのだろうなと思う。

 

 どの役者も素晴らしく、舞台装置や照明も見事で、あれだけのクオリティであのチケットの価格は安い、というのが率直に抱いた感想だ。物語の構成も、あらゆる年齢層を対象にしているが故にとても分かりやすく観やすかった。