観劇感想『蚊』 2018.12.22(sat)

 

 あらすじ『何の変哲もない日常。蚊が人間の血を吸いに来た。そんな時、家庭教師が娘に留学の話を持ち掛ける。思い思いに血を吸う蚊だったが、人間世界で起こる衝撃の場面を目撃してしまう。はたして、蚊はどうするのか、どうするべきなのか。』(パンフレット記載抜粋。)

 

 『蚊』の世界観は、とてもユニーク且つなんでもありな世界で、役者たちはとても楽しそうだなという印象が強く残った。

 恐らく演出者はハッピーエンドが好きで全て良い方向にしたいのだろうけど、結局は悪役が一人もいないで、全て良い話で終わってしまったのは少し物足りなく感じた。

 殺し殺されの人間と蚊の関係性を題材にしていたのは盲点だったが、蚊役の人間に蚊を描いた絵を持たせてしまうのは勿体ないなと思った。蚊は人間の世界ではミクロなのでそれを表していたのだと思うが、「あぁ、これは蚊なんだ」と会話の中で分かれば勝手に補填するので、そこは観客側の想像力に委ねてほしかった気もする。

 

 この公演を観る前に、坊ちゃん劇場でやっていた『よろこびのうた』を観た。最後に役者が歌う前に「観客の皆さまもご一緒に!」と観客側も引き込もうとする。だが、役者が「ご一緒に」というのにも関わらず、役者と同じように声高らかに歌う者はほぼいない。

 涙ぐむ、笑う等は反射的な感情の表現に対して、歌う、叫ぶなどは自分の意志で行える為、抑制してしまうからだと思う。何故抑えるのか?余程の目立ちたがり屋でもない限り、舞台側に立っている訳でもないのに注目されたいと思う人間はそういないからだと勝手に推測している。

 それだけ、プロでさえも観客を巻き込み何かをするというのは至難の技で、役者側と観客側を同じ温度に持っていくというのはなかなか難しいと『蚊』を観て再度感じた。