観劇感想『にせ桃太郎 [親子で楽しむ演劇]』 2018.2.18(sun)
開演30分前にも関わらず、シアターねこ一階ロビーには子供連れの親子が多く待っていて、老若男女と幅広い年齢層で開演時には満席。それだけで期待が膨らみ、観劇後はその期待を裏切らない満足感で帰りました。
にせ桃太郎の簡単なあらすじは、-桃太郎はおじいさんやおばあさん、村人たちから鬼退治に行くようすすめられ、イヌ・サル・キジをきびだんごで雇ったものの、キジがどこかに行ってしまう。仕方なくキジが戻ってくるのを待っていた1人と2匹の前に現れたのは、討伐するはずの鬼。しかし不思議な事に、人が鬼を恐れているように、鬼も人を恐れている模様。違和感を感じた桃太郎は鬼から話を聞くと、桃太郎側と鬼側の主張が食い違っていることに気付く。桃太郎は悩む。「鬼ヶ島に行くのか、行かないのか。」-
従来通り、『桃太郎が鬼を倒してめでたしめでたし』にしていないのには、そのままだと面白くないだろうという面や、客(主にお子さん)にただ観てもらうのが目的ではなく、考えてもらいたいという意図があったからだろうなと思います。観客も参加形式の演劇の為、演者(桃太郎とイヌとサル)がクイズを出題したり、質問を投げかけたりしていました。それに対して子供たちが、嬉しそうに答えたり、一生懸命考えている様子を見ていて、暖かい空間にいるなと幸せな気持ちになります。
上演時間は約65分。その間子供の注意を惹きつけるのは容易なことではないと思うのですが、出ずっぱりの桃太郎・イヌ・サルは見事な演技やアドリブなどで物語を進めていくのに、ただただ感心するばかり。また、桃太郎一派と鬼役2人以外は各所(香川・愛媛・高知)の現地キャストが出演していて、一六タルト太郎なんてユニークな役もあったり、愛媛ならではのネタを取り入れていたりと、色んな工夫が凝らされていました。
最後桃太郎は鬼を倒す為ではなく、助ける為に鬼ヶ島に行き、鬼を無事逃がします。
が、色々と諸事情があり、桃太郎が鬼ヶ島を壊滅させたという『嘘の事実』がTwitterなどで拡散されたり、キジが桃太郎に成りすましてアカウントを作っていたり、桃太郎を模した人形を焼くなどのデモ動画があがったりと、桃太郎はあまり良い気持ちにはならない描写が描かれつつ、それでも、助けた鬼から「ありがとう」という言葉を貰っていて、それだけで満足そうでした。
子供たちはもしかしたら、派手に悪を倒すヒーローの方が好きかもしれないけど、私はにせ桃太郎が、今まで見たどんなヒーローよりもかっこよかったと、大人になった今だから思えます。今日観た物語が、子供たちに何か引っかかるものを残して、大人になった時ふと思い出してくれたらいいなと思える、そんな劇でした。