観劇感想『ハツカネズミと人間』 2018.3.24(sat)
高松市常磐町に位置する商店街の中に『高松swagg』というお店があり、そこが今回観劇した公演の会場でした。
あらすじは、『恐慌時代のカリフォルニア。出稼ぎ労働者ジョージとレニーはいつも一緒。行く先々で問題を起こすレニーのおかげで二人はいくつもの農場を渡り歩いている。そして辿り着いた新たな農場。そこには癖のある人間たちが暮らしていた。』(フライヤー記載抜粋。)
レニーは大柄で力があるけど、記憶することや学習する能力が低い。ジョージはそんなレニーを疎ましく思っているが、レニーの叔母・クララにレニーの面倒を頼まれて仕方なく共に行動している。
二人は自分たちの農場を持つという夢を叶える為、新たな農場で働き資金稼ぎをするものの、レニーが再び問題を起こして最後ジョージはレニーを背後から撃ち殺してしまう。要はメリーバッドエンド(登場人物の視点によってハッピーエンドかバッドエンドかの解釈が分かれるもの)の物語。
この物語で唯一救いがあったと思われるレニー。綺麗な川を眺めながら、苦しまず、夢に想いを馳せながら、ジョージの手で死んでゆける。
いつもはレニーが何か問題を起こすと怒るジョージは、最後のシーンでは終始穏やかな表情を浮かべている。でもその表情は、赤ん坊のようなレニーに対して微笑んでいるようにも、哀れんでいるようにも見える、とても切ない演技。撃ち殺したあと、被っていた帽子で泣いている顔を隠し、レニーの死と、自分の夢が遠ざかる悲しみを表現している。
役者の方々の演技力で、海外の話であるものの、違和感なく観ることができました。特に個人的には、老婆・キャンディの演技が好きです。穏やかで可愛らしい老婆かと思いきや、役立たずと罵られ殺された飼い犬のことや、片腕で体力もない老いた自分を見下され続けてきた怒りが爆発し、人間の負の感情が除々に溢れ出す。
また、レニーの妄想のシーンで叔母・クララも演じており、クララとしてレニーに容赦なく責め立てる様は狂気的でした。
重いテーマが背景にあるものの、演出のおかげで気持ちが沈み過ぎることなく、終わった後に色々と考えさせられる。そんな作品でした。