観劇感想『これまでとこれからのアラワレ / きよしこのよる』 2018.3.24(sat)

 

松山市花園町のギャラリー花ゆうで、「『パッチワークス』と『きよしこのよる』の2つの劇団がそれぞれ30分の短編を合同で上演」を観てきました。

 

2本目きよしこのよるの上演内容は『陽が照っている』。

あらすじは『仕事に生活、そして思い出。男は毎日鍬をふるっている。この実が成れば、きみにお裾分けしようと思う。男は毎日鍬をふるっている。この作品は、或る友に向けて書いた4通の手紙である。』(フライヤー記載抜粋。)

舞台には、敷布団と掛け布団、スーツなどの衣類をかけるスタンド、仕事用の鞄、布団の足元に置かれた新聞や参考書らしきもの。それから、枕元に一つの植木鉢。

登場人物は社会人らしき男を演じる川田秀徳さんと、植木鉢の横に体育座りをしながらひたすら本を読んでいる木邨明恵さん。男は植木鉢の横の人物(木邨さん)は見えていない前提で物語は進んでいく。

男の日常を淡々と描いたもので、幸せの木というもの(枕元の植木鉢)が出てくる。恐らくそれは、男が帰りを待っている、男にとって大切な誰かからの贈り物。

だけどある日、男は水やりをし過ぎて幸せの木を枯らしてしまう。

幸せの木が枯れた途端、男は無性にやりきれなくなる。幸せの木は恐らく、男にとって大切な誰かの代わりだったのではないか。

独りは慣れた、案外向いているのかもしれない、と最初嬉し気に綴っていた男の姿はそこになく、寂しさだとかやるせなさだとか、そういったものが終盤にかけて滲み出る。

最後は誰かに電話する。会う約束をしているような、嬉し気な姿。

今までも電話という手段がありながら手紙を綴っていたのは、忙しない日常を送る相手への配慮か、疎遠してなかなか連絡をするタイミングを失っていた気まずさか、ただただ男の意地か、繋がらなかった時の絶望感を抑えるためか。

 

アフタートークの際、木邨さんが「普段の生活に関係無くても、大切な人がいるよね。って川田さんと、この作品を作る際に話していました。」と仰っていて、そのような感覚がスッと出るのが、なんだか凄く素敵だなと思いました。そんなお二人で作られた、切なく穏やかな作品でした。