観劇感想『I SEE』 2018.3.31(sat)

 

東温市に新たにできた小劇場『シアターNEST』。そこで行われた東温市民劇団旗揚げ公演の『I SEE』を観てきました。

舞台奥一面に壁が設置されていて、そこにプロジェクターで文字を映したり、一部が扉になっていたりと面白い舞台装置が印象的です。

 

おおまかな話の内容は、『高校の頃に付き合っていた彼氏と別れるきっかけを(無意識に)作り出した父親と壮絶な喧嘩をし、その後松山に移り住むハルカ。けれどある日、父親が急に入院。それをきっかけにハルカは地元に帰り父親ときちんと話そうと決意する。だが、その決意が叶うことは無かった。』

ハルカは、彼氏と別れるきっかけの原因となった動画を実は最後まで見ていなくて、父親が入院し実家に帰ってきたことがきっかけで、数年ぶりにその動画を見る。そして動画の未視聴の部分で、父親がハルカをどう思っているかぽろっと話している所が映る。

父親からしたら何でもない、当たり前な感情が出ただけかもしれないが、それを聞いたハルカはどれほど傷つき後悔したことか。喧嘩したあの日の前にその言葉を聞いていたら、父親とぎくしゃくすることもなく、未来が変わっていたのではないかと思わせる、大事な言葉。

 

最後、父親がこの世から離れかける際「私を見ろ、目を閉じるな」と必死で止めるハルカの演技に、思わず泣きそうになりました。

フライヤーの裏に小さく書かれた『言葉に出して言いたいことは恥ずかしいものだ。』という言葉。確かに、大切だよとか好きだよとか、愛しているだとか、好意を表す言葉ほど人はさらっと言えないよなと思うと、この公演はその言葉に集約されているような気がします。

 

今回、演劇と触れられる場所がまた一つ増えたということを、とても嬉しく思います。

この作品を筆頭に、これからもどんどん面白い作品が増えていくのが楽しみです。瞬きの回数を減らして、大事なものにもっと触れようと思う作品でした。