観劇感想『にぎる』 2018.7.1(sun)

 

あらすじ『深刻な水不足解消のため、”水を増やす水”である「たね水」を、200km離れた国立水センターから持ち帰るという特別業務の担当になった市職員のふたり。仕事やお金についてのあれこれを喋りながらの道中、大事な「たね水」が減っていることに気づき…。』

 

この公演の前日に行われたティッシュの会のWS参加させて頂き、その際、一つの作品をどうやって創るかの流れを体験した。

それを踏まえて観たからか、誰かの会話を自分が透明人間になって覗き見ているような、普段見慣れているような演劇とは異なる日常的な空気感が前回(『ゆくすえ』という作品を)観たときよりもスッと馴染む。

 

渇水状態に陥っている市からしたら、「たね水」は金よりも価値のある物…という前提を踏まえて物語は始まる。

市民の役に立ちつつ、貰うお給金に見合う仕事をこなしたいと願う女性と、なるべく苦労せずお金を手に入れたいという思考(パチンコや投資等)を持った男性の掛け合い。歩き、途中休憩しながらの道中、お互いが自分の想いや考えを相手に話すが、お互いにいまいち響いていないような反応が、二人は別の人種で、この先もわかり合うことは無さそうな未来を示唆しているかのようで面白かった。

 

後半で男性が女性の千円をさり気なく自分の物にしようとするが、女性はそれを許さない。やんわりと自分のお金だと主張し、男性から返してもらう際、なかなか掴んだ千円を離さない男性に対して「にぎるん?」という言葉を発したように聞こえた。

初めは「なんでそんなに強く握るの?」という意味かと思ったが、自分の物にする(=「私のお金を盗るつもり?」)という意味合いのにぎるだったのかと、観終わってから思った。

 

最後のシーン、一緒にいたはずの男性の姿は無く、女性一人で「たね水」の入ったバッグを抱え歩いている。それだけで、「たね水」を(恐らくだが)横領しようとしていた男性の末路を勝手に想像してしまい、ぞわっとした。

 

 他にないこの独特の空気感が好きなので、またいつか出会いたい思います。