観劇感想『M』 2018.7.1(sun)
『どうしようもなかったことにああすればこうすればとか後出しじゃんけんで人を値踏みするのが本当にどうしようもなく、腹立たしい出来事ではあるけれどそういうものなんだと諦めている。』
時給1万円以上の価値がある女子大学生と、時給800円台の価値を選んだ女子大学生。
別に現実離れしている話ではなかった。私が知らないだけで、あの人やこの人もやってきた、あるいは、これからやる行為かもしれない。私にとって日常的なこと、と言わないだけで、それが日常だという人もいる。私の日常や、常識から離れているもの、キャパシティを越えているものを目の前に提示されて観ないといけない状態が、一番しんどいのだと思う。
観終わって一番に、何故こうも複雑な気持ちなのかと自分に問うた。正直、こんな気持ちになるくらいなら、観るのが嫌なら、途中で席を離れればいいだけの話なのだが、そうしないのは私の意思で「こういう現実もあるんだぞ」「自分に都合のいいものばかり見るな」という村山氏なりの表現に、なんとなく目を背けてはいけない気がする。(あと、結末にもしかしたら…と淡い期待もする。)
時給1万円以上のバイトをする選択としなかった選択。どちらが正しく、どちらが間違っているかだなんて指図できる人はいるのだろうか。そんなのは、当の本人たちがきっと一番わかっていて、一番悔やんでいて、できることなら、あの日々にもう一度戻ってやり直したいだろうということは容易に想像できる。死が救いの道にもなる。
物語の初めに、笑いながら自害する場面がある。あれについてどう思うかは、きっと私の中では死んでも決着がつかない。死は逃げだという人の意見も、どうしようもなくて死を選ぶ人の気持ちも、きっと両方正しいから。
唯一気持ち的に救われたのは、あれが演技で、しんどい、辛い、苦しい、といった感情を動かす、この世の作品の一部であること、だということ。
今でも少し考える。もしも私が彼女たちであったなら、どちらを選んだだろうか。