観劇感想『吃音ヒーロー』 2018.6.3(sun)

 

あらすじは「吃音作家のキツオと演出家のニナオ。旅劇団である彼らとその仲間達はワイトリーユを数年ぶりに訪れる。そこにはかつて芸術の都と呼ばれた面影は無かった。その理由を宿屋の女将レティシアに尋ねるニナオ。『数年前からこの国は死んでしまった』

領主ドルフの娘オルカを巡り、歯車が噛み合わなくなったワイトリーユ。かの地を舞台に繰り広げられる愛と復讐の人間模様。」(フライヤー記載抜粋)

 

舞台には、箱を組み合わせた簡易的なステージと、周りに数個の椅子。作り込まれた舞台も良いけれど、馬車にも町にも森にも、何にでもなれる舞台もやっぱり良いなと思います。

RPGに出てきそうな衣装が個人的にはツボで、物語の世界観に合わせた格好良く、可愛い衣装がそれぞれの役者の役柄によく馴染んでいて、開場中に見かけた瞬間からわくわくした気持ちになりました。

 

キツオは吃音なのがネックなのかと思いきや、旅劇団の仲間達はそんなキツオを受け入れている様だからそこまででは無さそうで、だけどいざという時(オルカと出会うシーンとか)がやはりもどかしそうなのが、こちらも演技だということを忘れてしまうくらいむずむずしました。

ポップでコミカルに演じるというだけでも難しいと思われるのに、複数の役柄をこなしていく役者達の演技力や器用さがただただ羨ましいです。

コメディにテンポ良く時間が流れていく物語。序盤ワイトリーユへと向かう途中の馬車の中の、希望に満ち溢れた彼ら彼女らの姿が、今回の物語で一番幸せだったのではないかなと、個人的には感じました。

 

オルカが亡くなり、国民の歓喜が国中で沸き上がり、色とりどりの紙吹雪が舞う。

凄く好きなシーンです。あの光景は、目を瞑ればいつでも思い出せてしまうほど、とても綺麗で苦しい、皮肉がかった演出だなと思いました。

『これは悲劇か、喜劇か。』とフライヤーに書かれていたのを見て、これは間違いなく悲劇だろうと思いつつ、もし、物語の最後に笑えたり、幸せならば喜劇。悲しんだり、不幸であれば悲劇。という考え方を前提に置くとしたら、少なくともオルカにとっては喜劇(幸福)だったのだろうと思います。

 

 けど、キツオが望んでいたのは、彼女に笑ってほしかったのではなくて、自分が彼女と共に笑いたかったのだろうな。と思うと、やはりどこか寂しい余韻が残る、そんな物語でした。

 

 

追記:2018.8.5(sun)

 

 約2か月の間が空き、今度は劇団まんまるの活動拠点・徳島県での公演。

物語の内容自体に大きな変更(通過点や結末など)は特には無く、変わった点を挙げていくならば、公演場所、数人の配役の交代、演者の追加、舞台装置、衣装。

 

 相変わらず男性はかっこよく女性は可愛らしいRPG風の衣装が前回と少し変わっている方もいて、再出発の衣装チェンジ(レベルアップ)というイメージが自然と沸きました。また、舞台装置は前回と異なり造りこまれているものの、外にも中にも見える工夫が凝らされている造りで凄いなと感じました。

 

 今回は役を交代している方もいる中で、この世界観の彼ら彼女らの設定がはっきりしているからか、前回を観ていてもサーディンはサーディン、ニナオはニナオというように違和感なく観れました。

物語の流れは変わっていないものの、劇中劇の中身が変わっていたり(終盤の劇中劇が好きです)、途中にエピソード(メルルーサの話)が追加されてました。メルルーサの話をする上で役に敢えて別の人物が声を当てるやりとりが、人形劇のようで面白かったです。

 

 相変わらず私はテリー・ドリーの掛け合いが好きですし、徳島ver.サーディンの肉体美と劇中劇でダッフルコートを静かに脱ぐのはずるいなと感じましたし、メルルーサの言葉遣いのギャップであったりとか、旅劇団一座の賑やかな雰囲気が好きだなと思いました。

 

 最後のあのシーンは今回の方が登場人物が多いからか、より悲劇と喜劇の落差が生まれていたような気がします