観劇感想『松山グラフィティ。』 2019.10.14(mon)

 

 『挫折や苦痛を抱えた男性4人が、ダンスを通して絆を深めていく、大人(おやじ)の青春ハートフルコメディー。』(愛媛新聞抜粋)

 

 前の会社をリストラされガードマンへと一転した坂本一馬、早くに両親が他界し妹と共に親が残してくれた太陽軒を切り盛りする若き店主・小暮太陽、東京で数年務めていたが地方へと左遷されたTV局ディレクターの佐伯太。それぞれ悩みや葛藤を内に秘めつつ日常を過ごしていた中で、夢を叶える為にフィリピンパブで働いていたマリアと一馬が出会ったことによってほんの少し非日常へと進んでいく。

物語の主軸となる人物の中で唯一自身についてほとんど語られなかったおかまBAR「白樺」のオーナー・松本ナターシャが、煮え切らない男性3人の間を結び、𠮟咤激励しながらそれぞれの心境を変化させるきっかけを作っていくのが印象的だった。

 

 幕が無いシアターねこに自分達で幕を作ることによって、舞台装置が作り込まれた太陽軒と比較的簡素な造りのフィリピンパブといった異なる場所を、暗転することなく幕の内側で場面転換でき、長時間の公演でも集中が途切れない工夫が凝らされていたように感じた。

 

 主軸となる人物たちのエピソードが目まぐるしく展開していく中、彼らを支えるキャラクターたちのチャーミングさも引き立ってそれぞれ皆人生の主人公という想いが伝わってくるようだった。

 

太陽軒のメニューにあった夕花丼は両親が夕花が生まれた時に作られたものなのだろうかとか、中村が一馬に渡せなかった缶コーヒーの先が最後のランチから始まるのだろうかなど、終わってもそれぞれの人生の先を想像するのが面白くそういった余韻もあって良かったなと思う作品だった。