観劇感想『へそのお/高知大学演劇研究会』 2019.10.20(sun)
『産まれる前の赤ちゃんから繰り広げられる衝撃的な二人劇。一見何も考えてないように見える赤ちゃんが「トド!」「ギラファノコギリクワガタ!」「何それ!」シャカ力さんの戯曲を演研風にリアレンジ。若者の瑞々しい舞台をとくとご覧あれ!』(パンフレット記載抜粋)
恐らく胎内にいる赤ちゃん同士で、精神的な世界での会話なのだと思う。前世クワガタだったが虫かごで飼われていて空を飛べなかった赤ん坊と、前世も赤ん坊だったが捨てられたのに同じ両親の元へ転生する予定の赤ん坊。クワガタだった赤ん坊は自由に空を飛ぶパイロットになる為に、再度同じ親の元へ産まれようとする赤ん坊は今度こそ幸せになる為に、双方この世という世界に希望を抱きながら産まれる為の準備をしている。
舞台上には様々な音が出る物で散乱していて、役者はへそのおに見立てた赤いロープに繋がった状態でいる。
時折へそのおを引っ張り、母親と命が繋がり呼応している場面があったり、役者が意図的に生み出す音は見える筈の無い胎内を表していて、想像や空想を具現化できる演劇ならではの、生が感じられる表現で素敵だなと感じた。
観劇感想『ごみばこ/絵空事』 2019.10.20(sun)
『「ごみばこ」というのは、当て字で「護美箱」と書くそうです。ゴミを入れると周囲は美しく見えます。そしてそれは、自分自身の、心においても当てはまると思うのです。そんな「護美箱」を整理する話です。』(パンフレット記載抜粋)
舞台中央にポリバケツと下手にジャージを着た役者一人。ポリバケツからは折り紙が微かに溢れていて、上手からもう一人赤い服を着た役者が入ってくる。
あの役者二人は、一人の人間の感情と理性を表現しているのかなと思ったり、おり紙は記憶の欠片みたいなもので、黒い塊は余程嫌な出来事があった時の記憶の一部なのかなと考えたり、物語の中で明確に「これはこういう意味合いです」と断言せず話が進む分、色々と想像させられる作品。
嫌なことがあると、他の嫌でもなんでもない出来事すらそこに引っ張られて嫌だなと思うようになったり、思考停止して何も感じなくなったりすることは私も経験はあるし、時間が経って多少落ち着き客観的に自分を見れるようになると「なんでこんな感じ方をしていたんだろう」「何故こんなことを言ったのだろう」と自分会議が始まることもあるので、あの二人の会話ややりとりがそれに近いように感じたからこそ感情と理性かと個人的には思った。
最初に「ただいま」が先か「おかえり」が先かという押し問答が最後に活きていて、綺麗な締め方だなと感じた。
観劇感想『明美 season1 / オカザキケント』 2019.10.20(sun)
『明美を撮ります。明美は交流します。スキルアップもします。しかし、明美を撮れるかどうかは分かりません。それは、「実験」という言葉に囚われすぎているからなのかも知れません。』(パンフレット記載抜粋)
単刀直入に言えば「演劇舞台でAVを撮りたかったが、場にそぐわないと本番前に目が覚めた明美に逃げられ急遽謝罪会見を開く」という男性の話。いわば、オカザキケントさんの一人芝居。
蛸蔵ラボのフライヤーには「明美」という役者も記載されているが、恐らく最初から一人芝居をされる予定で、作品の設定の為に敢えて表記したのではないかと憶測できる。
記者会見を開き、狐のようなものがいると騒ぎ、爪が急に伸びるようになり、その現象はその狐のせいだ、と嘆く。文字にしてしまえばこういう内容なのだが、30分ほどある中で観客を引き付け、一人であれだけ面白おかしく表現できるのは、役者として高いポテンシャルがあってこそだろうと思う。そして蛸蔵ラボはあくまで「実験」の場なので、そこをフル活用している点が凄いなと感じた。