観劇感想『光垂れーる』 2019.11.10(sun)

 

 『1993年、台風13号で壊滅的な被害を受けた御能村は、多くの犠牲者を出し、ほぼ廃村の状態となった…それから26年が過ぎ、数年ぶりに故郷である御能村を訪れた男は、死んだはずの両親と再会を果たす。彼がかつて暮らしていた村では「神様」と呼ばれる者が死者を蘇らせ、死者と生者が共に暮らす村となっていた。しかし蘇った死者達は、自分達がなぜ蘇ったのかを問い始める。神様とは一体何者なのか?死者達が出した決断とは!?』(パンフレット記載抜粋)

 

 内子町を拠点に活動されている劇団オーガンスと、東京で活動されているぽこぽこクラブ、そして一般応募で参加された方々で創り上演された今回の公演。

 レジデンス公演ということで、実際にぽこぽこクラブの方々が内子町に約1か月泊まり込んで創作してきたとのこと。いくつもの木材を複雑に組み合わせて造られた舞台セットの材料は内子町で集めたものであったり、作中に愛媛に関係のある小ネタを加えたりと、今後ある東京凱旋公演とは恐らく中身を(少し愛媛仕様に)変えていたのかなと感じた。また、奈落から舞台に上がったり、花道を利用したりする演出は内子座ならではの使い方で面白かった。

 

 人が決めることは時代によっていくらでも変わっていくのだろうなと思う。倫理も、今より少し過去に存在していた人間達が決めたことで、寿命を延ばすことが許された今があるなら、もしかしたら技術の発達具合では将来死者の蘇生も当たり前のように行われるかもしれない。ただ彼女彼らがいた時代の常識とか倫理観ではそれが許されなかったから、この世とあの世へ別れるという苦渋の決断をした。もっと共に居たかったであろうけど、それが生者の人生を縛り付けるのなら自分は…と、葛藤はありつつも最終的に身を引ける強さが羨ましい。

 

 生には制限があると改めて感じたからこそ、あのダンスや演技も力強く美しく見えたのだろうなと感じた。