観劇感想『劇団とある旗揚げ本公演』 2019.2.10(sun)
作品は「夏のあなたへ」(作・演出 大窪竜司さん)と「とある男平成31年ver.」(作・演出 星川直美さん)の二本立て。
「夏のあなたへ」
真ん中にローテーブルが一つと上手側に段ボールが3つほど置かれた舞台に女性が一人座っていて、そこに1人の男性がふらっと入ってくる。会話からして恋人同士と察せるが、どこか違和感があるのは実は男性側が亡くなっている人間だという伏線。
後ほど女性が男性の為にオムライスを作ろうとするが、卵が無く買いに出かけた際にうっかり鍵を閉め忘れ、女性と男性の共通の友人(幼馴染?)がまるで自分の自宅かのように入ってくる。
ローテーブルに置かれていた写真立てに話かける友人からは男性が見えていない。けど、男性は友人が見えている為、友人の独り言に男性が相づちを打つ様子が、まるで自然に会話をしているように見える。けど、第三者はそうではないと分かるのが少し悲しい。
逢えない人に一日だけ逢える日を描く、気持ちが切なくも暖かい物語だった。
「とある男平成31年ver.」
大窪竜司(役名)と、とある男、この二人が出会うまでの経緯をなぞっていく。
あの結末はどこから始まっていたのかなと終わったあとぼんやりと考えていた。最初に『応援』といった圧力をかけられていた時からなのか、その空間に行きたくなくなり家に引き込もり始めたときからなのか、父や兄にお前のせいでと責められた時からなのか、文通相手が苦しんでいた原因がそもそも自分だったと知ったときなのか。
ポップで明るい色合いで役者が演じる為、皆幸せハッピーエンドで終わるような匂いがするものの、終盤から雲行きが怪しくなる。幸せとか暖かさが広がっているように見せれば見せるほど、そうでなかった時の落差は凄いと感じた。
頑張れという言葉や、期待をすることでやる気や勇気が湧く人間もいるけど、そうでない人間もやっぱりいる訳で、それを見極め言葉を間違えないようにするというのはとても難しいなと改めて感じた。