観劇感想『流れ星』 2019.2.24(sun)

 

 『ある日、40年近く共に過ごした夫・星野謙作がこの世を去ってしまう。残された妻・夏子の前に現れたのは、一人の魔法使い・マリー。「あなたの願いを4つ叶えてあげます」とマリーに言われた夏子は「過去に戻って、あの時に本当に好きだった人と人生をやり直したい」と告げる。魔法で過去に戻った夏子とマリーを待っていたのは…。』

 

 脚本・宅間孝行の『流れ星』という物語が、風呂敷荘の最初で最後の公演。愛媛大学演劇部関係者の舞台装置のクオリティはもはや安定というか、毎回見る度に関心してしまう。

 役者が13人もいるのに一人一人が個性的で、物語が進んでいくほど登場人物に対する愛着や、もどかしい関係性にじれったくも甘酸っぱくも感じる。10人以上が同じ屋根の下で暮らすということもあり、ドラマや事件が絶えないが、そのドタバタ感も最後のシーンのあとで振り返ると愛おしい日常だなと思う。一つ一つ散りばめてきた物語の鍵がハマるごとに切なくなっていく物語。

 

 夏子自身にも勿論原因があるが、自分が愛するよりも、魔法というあるのか無いのかわからないものに縋り叶える方が可能性があると思い込んでいた謙作の、不器用で健気で自信の無い人柄が、二人の想いを上手く噛み合わなくさせていく。

 人がすれ違うのは言葉が足りない時だなと第三者として見聞きするとわかるように、夏子も過去に戻り、第三者として客観的に見ることによって、謙作の本当の想いにようやく気付けたのが救いだなと思う。

 

 

 最初と最後が同じシーンであるにも関わらず、過去に戻ったことによって変わった夏子の心境の変化が謙作に現れているように見え、捉え方や意味合いが違ってくるのが面白かった。