観劇感想『凄ロック』 2019.5.12(sun)

 

 『凄いロック。凄ロック。サイコロ振って前へ前へと突き進む。時には一回お休みしたり、ふりだしにもどったり。行くも戻るもサイコロ任せなんて、凄いロック。凄ロック。』(ライヤー記載抜粋)

 

 開場前に受付で、数名の観客にバナナを渡しているのを目撃して「何が起こるのだろう?」とワクワクしつつ、いざ会場へ入ると下手側に巨大なサイコロ。それと、数ヵ所に人一人の上にかけられる程度の大きさのシーツ。

開演したかと思いきや、事前にバナナを手渡されていた観客へ「ここに書かれた通りに動いて下さい」とスクリーンに言葉が表示される。スクリーンと音と観客のやりとりだけで、開演直後独特の緊張した空気が崩れて和やかになっていくのがわかる。

 

 バナナを渡された観客の仕事が終わると、役者(長女、次男、長男、山本)が巨大なサイコロの中から登場。生で見聞きする発声や動きのキレの良さ、安定した体幹で行われる身体表現は観ていて飽きない。

 途中で登場した母親が手にしていたサイコロを転がし、出た目によってお題が表示され、クリアすると次に進む。まさにスゴロク。ただ出る目は何故かほぼ3。

 物語の中盤まではほとんど笑いっぱなしなのに、唯一4の出た「あがり」の話の辺りから、なんだか不穏な空気が滲み出る。

 

 長女と次男と母親があがるが、「あがり=死」を意味していたため、3人はカレーを温める為に点けっぱなしにしていた火が(恐らく火事の元となって)亡くなってしまう。

 父親の「あがりたい」という言葉がそういう意味だと思うと胸を刺してくる。それでも、共に生き残った長男に差し出された、トラウマになっているであろうカレーを泣きながら食べる。

 あのあと2人があがったのか、それともただ単に前に進んだのかはわからないが、泣いてご飯が食べられる人はきっと大丈夫だと信じているので、後者であったならいいなと思った。