観劇感想『ハックルベリーにさよならを』 2019.7.14(sun)
『小学六年生のケンジは家庭教師のコーキチくんの影響で勉強よりもカヌーが大好きになる。しかし、母さんは危ないからとカヌーに乗ることを許してくれない。月に一度の父さんとの面会日。ケンジはボートに乗ることを楽しみにしていた。ところが、父さんの部屋にはカオルと名乗る女性がいて――。』(パンフレット記載抜粋)
舞台はカラフルでポップな印象を受け、中央にある可動式の台が机やボートの役割を担う。一回生が関わるのが初の公演ということもあって、メンバーも新しい顔が増えていてなんだか新鮮だった。開演までの間にパンフレットに記載されている役者紹介を見て、女性が男性役をするのだろうか?と何故か一瞬不安になったものの、いざ観てみると見事にハマっているなと感じた。
ケンジの両親は離婚していて、月に一度父親に会えるという環境。ならどうして一緒に暮らしてくれないのか、ともやもやしつつも両親には「大人の都合」と体のいい言い訳をされてしまう。そういった少し歪な環境に置かれているせいか、表面上はやんちゃな少年という印象を受けるのに所々で年齢にそぐわない孤独さを感じる。
ボクはケンジを、所謂過去の自分を、無かったことにしようとか、切り捨てようとか、そういう選択もある中でそちらを選ばなかった。「そんなこともあったかな」と忘れたふりをして生きていくこともできるはずなのに救おうとしたのは、それだけ父や母や、カオルに対して吐いた言葉が、後悔が残る言葉で取り繕ってしまっていたからなのだろうなと感じた。
これはもしかしたら一つの世界線で、カオルと繋がらなかったら、ケンジがなんらかの方法で生きることを止めていたかもしれない未来を回避した結末かもしれないと思うと、祈りが届き、押さえこんでしまっていた本音を伝えられ、過去の自分を救えたのは良かったなと思った。