観劇感想『十色夜景』 2019.9.7(sat)
あらすじ「年齢も過去も様々な人間達が集まるとある定時制高校でのお話。いつも通りの時間を過ごすうちにだんだんと感じる違和感、そして深まる謎…。そして誰もが予想しえなかった切ない真実が紡ぎ出される。」(パンフレット記載抜粋)
新入部員にとっては初舞台、三回生にとっては引退公演であった松山大学演劇部本公演。今回の作品は役者十名(数役ダブルキャスト)と、今まで観た作品の中でも比較的多めの人数。下手に教壇、生徒たちが舞台正面から見て横向きに座る形で、二列に机と椅子が並べられている。下手と上手にそれぞれ開け閉めできる扉が付いていて、壁にうっすらと汚れがついていたのが気になったが、その舞台装置も物語の伏線だった。
授業の始まる前の何気ないひと時での雑談、だがなかなか担任が教室へやってこない。担任を呼びにいこうと教室を出ると怪しげなチャイムが鳴り暗転。明転後、最初にいた人物たちとは違う生徒が教室へやって来て雑談しているが、会話の中で日付が変わっていないことが分かってくる。チャイムが鳴る度に舞台はリセットされ、登場人物達もその違和感に徐々に気づいていく。物語で途中から一人、青山という女性が教室へやって来なくなり、それがきっかけで生徒達は「青山は亡霊で、何か呪いをかけてるから時間がループしているのではないか」という疑惑が浮かんでくる。緑川を筆頭に除霊し成仏してほしいと試みるが、実は青山と伊藤、担任の白石以外の生徒達が火災で焼け死んだ死者側だった。
青山を成仏させたあとどうなるのだろうかという方向で想像力が働きかけていた為、その事実を知った瞬間「やられた」と率直に思った。
そこから語られていく「あの日」の出来事や青山の意図、生徒達の想いや伊藤と白石の存在。見送る側と見送られる側の境を越えて、互いに何かしら影響を与え救っていたことを知る。
ラストシーンは本来の台本には書かれていない演出が施され、最後に亡くなった生徒達が一人一人教室へと戻って来て、星が瞬き暗転していく。それが、本来舞台には再登場しえなかったはずの生徒達のアナザーエピソードを想像させる終わり方で綺麗だなと感じた。