観劇感想『きっと今もある弾性』 2020.2.23(sun)
『大学生のススムとシオリは幼馴染で両片思い。しかし、お互いに一歩踏み出せずにいた。深秋のある日、ススムのもとにシオリからデートの誘いが来る。だが、突然彼のもとに届いたのは彼女の訃報。』(パンフレット記載抜粋)
松山大学演劇部の3回生は卒業し、1回生と2回生だけの体制になって初めての公演。
一歩踏み出すことに互いに臆病になっているススムとシオリ。そんな2人をじれったく感じながら見守るアキラとハルカ。同じ学生という設定であるので、背伸びせずありのままを映し出した役者たちはのびのびしているように見えた。
『時間を巻き戻す代償に誰か見知らぬ人たちを巻き込み命を奪ってしまうかもしれない』という仮説を、タイムマシンの生みの親であるアキラから提示されたものの『シオリを助けるまで何十回、何百回とでも過去に戻ってやる』と最初は意気込んでいたススム。歳を重ね社会を意識するほどに感じるしがらみをまだ知らない故の強さが彼にはあっていいなと思った。
けれど話が進むにつれて、『自分とシオリとその他』みたいにカテゴライズしていたようなススムが、時間を巻き戻した先で少しずつ『その他』の人間との関係を築く度に成長していき、同時にシオリ以外の人間のことも考えるようになった。
結果論で言えばハッピーエンド(誰も死なずに終わる)だったが、実際ススムはシオリを救うことを辞める。一番大事だったものよりも、その他の人間を救うことを彼は選んだ彼はその時初めて、社会というものを無意識的にも意識していたのかなと思った。
時間の移動はまだ非現実的(いずれそれが当たり前になる世界が来るかもしれない)ではあるものの、そのようなものを容易く現実的に変えてしまえるからこそ、演劇は魅力的だと思う。