観劇感想『草の家』 2020.2.23(sun)
『旧商屋の門構えのまま残る「藤井計機商店」通称「はかりや」の藤井家。男4人兄弟の長男悟志に嫁いだ陽(ハル)。夫の死後も義母に寄り添い家を守ってきたが、その暮らしは陽の病気で岐路を迎える。親族たちが後継や家の処分を口にするなど陽によって保たれていたバランスが崩れていく。季節は初夏。今年の夏は、長男悟志の三回忌が執り行われる。』(パンフレット記載抜粋)
TOON戯曲賞2018で大賞を取られた戯曲の公演。100分という時間を感じさせず、終始役者1人1人の動きから目が離せないほど惹き込まれた。
公演が行われたシアターNEST内には受付や飲食が可能な空間(ホワイエ)もあるのだが、今回の公演にはホワイエも解放し、舞台上が居間や台所、ホワイエが(恐らく)店の内部を表現していて、新しい舞台の使い方に感心した。
自分以外の存在は他人のはずなのに何故『家族』は、自分と他人の境界線を越えて密接に関わっているように感じるのだろうか。そして密接になればなるほど、まるで自分のことのように感じてしまうのだろうか。
自分に近しい存在であるほど、言いたかったはずの言葉が言えなかったりするしんどさ、それぞれが自分とは一致しない悩みや苦しみを抱えていて『家族』ゆえに割り切れない(見放すとか、その存在から逃げるとかができない)苛立ち。そういった細かく揺れ動く思いが言葉だけでなく、所作や表情にも丁寧に現れていて凄いなと思った。