観劇感想『令嬢ジュリー』 2018.6.30(sat)

 

 舞台の中央には、正方形の箱が9つ。ピラミッド状に積み上げられた箱の頂上には純白のドレスを身に纏った女性が微笑みながら座り、絶妙な色彩で存在感を示す衣装を身につけた2人が舞台上を駆け巡る。

 あらすじ『夏至祭の夜、伯爵令嬢のジュリーは召使のジョンに踊るよう命じる。身分の差と、ジョンの許嫁であり同じく召使のクリスティーンがいる手前一度は断るが命令だと言われその手を取り踊る。クリスティーンが眠ったあとジュリーとジョンは二人だけで会い、一線を越えてしまう。そしてその後…』

 

 スウェーデンの劇作家、ヨハン・アウグスト・ストリンベリの戯曲を世界劇団の本坊 由華子氏が演出したのが今回の作品。本来この作品は野外で公演とのことだが、630日・71日の二日間の公演は屋内(シアターNEST)で行われるとのこと。

 

 屋内では、青や赤と場面や心象ごとに変わる照明がジュリーの純白のドレスを見事に際立たせていて美しいあまりに惚れ惚れするが、物語が進んでいくごとにジュリーの余裕の表情が荒れ乱れていく姿がまたなんとも言えない生々しさを発していて綺麗だった。

 

 積み上げられた箱の頂上と地面は地位の差を視覚的に表現しているようで、ジョンはいつも見上げていた。幼い頃から見上げるばかりで、リンゴ(高い地位の象徴?)が欲しくてたまらず、その執着心が自らを奮い立たせ、教養を得て自分自身を磨く。初め紳士的だと思った彼が、徐々に本性を曝け出していく過程を見ていると不思議と心が揺れる。

 

 クリスティーンとしての登場時間自体はジュリーやジョンと比べれば少ないものの、過去のジョンを追う者やジュリーの母、と多様な役を演じる際の姿は、どこか狂気的で鳥肌が立った。鬼のような面を被っていて、軟体動物のようなしなやかさと独特の呼吸が一番前の列に座るとダイレクトに伝わった。

 

 時にメリハリがあり時に緩やかになり、曲と演者3人が呼吸を合わせて動くのがとても印象的であったのと、赤く薄い布が火や血、しがらみのようなものと様々な意味合いの持つものへと変化していく使い方が神秘的だった。

 

 死によって救われると信じたジュリーの笑顔がしばらく忘れられそうにない、そんな作品でした。