観劇感想『10万年トランク』 2018.7.1(sun)

 

『 「どうも。旅人です。いくつかの物語をこのトランクから取り出してお話しましょう。

詰まってるんです。この中に。はるか昔、地球で暮らしていた人たちの物語が」

その男は旅の途中。 故郷の地球へと還る旅の途中。 宇宙船の汽笛が鳴るまでの間、ほんの暇つぶしのオムニバスストーリー。』

 

トレンチコートを身に纏い、ハットを被り、トランクを持って西藤氏が客席から登場する。フランクに観客と挨拶を交わし舞台へ上がると、トランクから物語を取り出し始める。

 

一つ目は『チンピラの物語』。チンピラと、その子分らしき気弱そうな男。普段はやくざの下請け等を担っているようだが、初めて強盗を企てる二人。その理由は…。

登場人物は二人だが、西藤氏が一人で双方を演じる。目付き、話し方、姿勢、そういったものが一瞬にして別人に切り替わるのだが、その速さがとても一人が演じているとは思えない変わり方で、人がその場その場で変わっているかのような、そんな錯覚が生まれる。

二人の関係性や出会いを描く際の時間軸が前後バラバラであるにも関わらず、繋ぎ合わせ方が絶妙で、観ていて混乱しない。

結末は切ないけれど、ある意味幸せだったのではないかと思える終わり方。

 

 

二つ目は『眠れない軍隊の男の物語』。右手の人差し指がコの字形で固まり、敬礼が出来なくなった男。トリガーを引く為の指の形が、戦場で人を殺める事に対しての恐怖によって戻らなくなり、指が気になって眠れなくなる。

初めは人を撃つことの恐怖や躊躇いを感じていたはずなのに、数ヶ月から数年経った(と思われる)ある日の母への手紙を読み上げる時には、目は据わり、意図も絶やすく人を撃ち殺してしまいそうな人物に変わっていた。その変貌がとても印象的だった。

生き延びる為に感情を捨てなければならなくなった、悲しい物語。

 

とても真っ直ぐな物語と演技で、また別の物語を観たくなる作品でした。